書籍・雑誌

Apr 23, 2007

山脇由貴子氏講演会in前橋 その2

・・・・・・・その1からお読みください。・・・・・・・

出版後よく訊かれることのひとつに
「どうして子どもたちはこんなに簡単に死んじゃうんだろう」
というのがあるそうだ。
これには、氏は、報道でお葬式で先生たちが
土下座するシーンなんかを流すのもいけないんじゃないか、
と、思っているそうだ。
氏がいうには、
人間って、自殺するとき
死んだあとのことを想像しながら死ぬもんだと、
まるで自分が死んだあとのシーンを空の上から眺められるんだ、と、
そういう思いで死ぬんだ、特に自殺する人はそうだ、と。

自殺する人がそう思って...という視点は考えたことがなかったが、
おかもが思うに、こういう質問をする人は
ターゲットの無力感というものがぜんぜんわかっていないに違いない。
何をしても無駄、あまりにも無力だと思っている時に、
自分の死が大人をあたふたさせる力があると映像で見せられて
結論にとびつくなってほうが、どうかしてると思う。

さらに自殺について氏が語ったところによると、
今の子どもたちは皆
「大人になりたくない」とよく言うんだそうだ。
大人は大変そうで、いいことなさそう、
長生きしたくない、楽しそうじゃない、
そんな子どもたちの声をよく聞くと。
「30になって・・・」とか言うと、
「俺、そんな先まで生きてるつもりありませんから」って
そう言われるんだそうだ。

また、親たちも子供の将来に悲観的だ。
ほっといたら、子供は不幸になると思っていて、
今から頑張らせないと、負け組になる、
経済的にきっと苦労するとしか思えなくなっていて、
すごく、子供の将来が心配でたまらない、それが今の親だと。

子供って実は親の思いにとても敏感で鏡のように写しとるという。
親がそうだと、子供はどんどん暗くなるしかない。

だから、大人が今を、毎日を楽しんで、
ずっとひとつことやってると疲れるから、
たとえまわりに責められても、役割をいくつか持って、
いろんな自分になって、
「外に出るとなんか楽しいことあるみたい」
そう子どもに思わせなくちゃ。

仕事なんて、まわりの人を気にしたらいらいらしちゃう。
私の邪魔さえしないでくれればいい、それくらいの感覚で、
家庭でも、一日一回笑えれば幸せ、
それくらいのほうが幸福になれる。
私は、そうなんですよ。と、
にこやかに氏はおっしゃるのであった。

一時間弱の講演のあと、
30分ほど質疑応答の時間がもうけられた。
「実は今いじめられてて・・・」
「今、学校でこういうことがあって」のたぐいの
いじめ相談会になったらどうしようと思っていたのだが、
参加者の少なさがプラスに作用したようで、
けっこう建設的な質問がなされて、この時間も面白かった。
「保護者と話し合って協力が必要とのことだが、
 最初からけんか腰で怒鳴り込んでくる保護者には
 どう対応したら」とか、
「ターゲットはとにかく学校を休ませろというが、
本人がどうしても登校するといいはる場合は?」とか。

おかもも、本を読んで、
これはそうだなという部分が大部分だったのだけれど
いくつか、これはそれというよりはこうでは?という部分もあって、
お会いしたら訊いてみたいことはたくさんあった。
で、とりあえずひとつだけ訊いてみた。
「学校はいじめに対するルーティンみたいなものができていて
 いまさら親が参加しようとしても
 自分達のやり方で通そうとする。
 保護者は、自分のことでいっぱいいっぱいで、
 PTAのクラス役員すら押し付け合って、
 決めるのに一時間ももめたりする。
 さらには給食費すら払わない親だって...
 こんな現状なのに、とにかく大人たちが仲良くして
 風通しよくして皆で子どもを守らなきゃって言われても
 きれいごとにしか聞こえないという思いがある。
 そんな風にしか思えない時はどうしたらいいんですか?」と。

氏が言うには、
たしかにそういうこともある。
ただ、氏はこの本を出版していろいろな人と出会い、
そこにいくつもの光を見ている、と。
たとえ今、思いがうまく伝わらず、実りがなくても
きっと10年後15年後には今よりよくなっているし
そうでなくてはならない。
だからあきらめず少しずつやってみれば、
きっと光が見える、と。

答えてもらって、素直に感動してる自分と、
さすが心理司! 手詰まり感への反対説得として満点だな、
そうか、愚痴ってる人間には未来を語って
時空軸をひとつふやして
視点と角度変えてやるってのがきくんだぁ、
とか、思っちゃってる自分がいたりで
なんかなんかだったのだけれど。

本当に大変勉強になりました。
山脇由貴子先生、ありがとうございました。

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Apr 22, 2007

山脇由貴子氏講演会in前橋 その1

2007年4月21日土曜日、煥乎堂書店本店にて開かれた
山脇由貴子 氏の教育講演会を聞いてきた。

氏が昨年末に出された
『教室の悪魔  見えない「いじめ」を解決するために』
この本はおかもがいろんな人に読んでもらいたいな、
と思っている本なので、
より多くの方々の関心を得られることを願って、
講演の様子をここでレポートしたい、と思う。

会場の煥乎堂5Fホールは、
収容人数170名ほどの小ホールである。
コンサートなども行われるとあって、音響はよく、
講師の方のお声もよく通って聞き取りやすかった。

だが、開演時間になっても、
客席は3分の一ほどしか埋まらなかった。
もう少し客を集めておけよ!煥乎堂!
講師の先生に失礼だろ!

客層はいろいろ。中高生の母親といった感じのおばさまから
たぶん教師と思われる中年男性、20代後半とおぼしきカップル、
ご年配の方から大学生ふう、現役女子中学生と思われる二人組。
ただ、ほとんどが単独客である。
「いじめに関心があるのね」と思われてしまうと
マイナスなイメージでもあって、
一緒に聞きにいきましょと友人を誘いにくい
ってことなのかしらん。

講師の山脇氏は、美人である。
1969生まれとのことだが、30そこそことしか見えない。
「あの細い体のどこにあんなエネルギーが・・・」
と言われていそうなタイプ。
しゃべり方もかなり矢継ぎ早である。

山脇氏の主張は、
今、現実に子どもたちが直面している事態は、
昨年末の一連の騒ぎの中で
前提としてイメージされていた「いじめ」とは
あまりにもかけ離れたもの、
いじめというよりはウィルス
「起きる」のではなく「感染する」もの、
悪質な集団ヒステリーの流行なのに、
そこがきちんと理解されていないから、
各種報道で出されるメッセージは見当はずれだし、
学校や教育機関の対応もかえって子ども達を追いつめている、

という所から出発している。

このいじめ=集団ヒステリー説は、おかもは正しいと思っている。
自分の体験から、おかもは
いじめというものになにか儀式的、
あるいは民俗学的なものの匂いを感じている。
この匂いの部分は
氏とおかもでちょっと感覚がちがうみたいなんだけど、
・ターゲットが人間としての身分を剥奪されること、
・攻撃側の罪悪感を鈍麻させるシステムが発動されること、
・ターゲットのダメージは「無力感」からくるものであること。

という点はまったくその通りだと思うし、
・そういうことがあまりにも世間で理解されていない、
・「負けるな」「強くなれ」「命は大切」
   等のメッセージは百害あって一利なし

という点では、おおいに山脇氏に共感し、
よくぞ言ってくれた、と思っている。
もっとも、世間の理解という点では、
おかもは氏よりシニカルなので、
理解してないというより、
理解したくない見たくない部分なんじゃないか
とも、思っているのだけれど。

で、講演に話を戻すと、
「そのいじめイメージは違います」というところから話を始めて、
その説明や事例紹介をしなくてはならないので、
どうしても内容の7割近くは本の内容とかぶってしまっている。
で、そこんところは是非、本のほうで読んでほしいと思うのだ。
たとえば、いじめの解決法その1として、
氏は「いきなり学校へ乗り込まない」とおっしゃるのだが、
ここにそうレポートしても、
氏の意図がちゃんと伝わらない恐れがあるし、
本には、なんでそうした方がいいのか、
なんでこういうことはしないほうがいいのか、
きちんと書いてあるので、そういうことは本にまかせようと思う。

本に書いてない話で、ちょっと感動ものだったのは、
この本の執筆動機に関する話。
なんと出版社のポプラ社が、けっこう熱かった、のだそうだ。
ポプラ社というのは、児童文学を多く出版している会社である。
そしてだからこそ、子ども達のために、今すぐ何かを、
という熱意があったのだそうだ。

児童文学ファンとしては、うれしい話ではないか。

話題がホットなうちに、という営業側の思惑と、
間違ったいじめ像を一刻でも早くという使命感から、
本は年内に出版ということになり、
氏は一週間でこれを書いたそうである。
テレビやマスコミが連日様々な意見を報道する中で
こういう本を書くのは、氏にとっては面白い経験だったそうだ。

ただ、この本を出す作業に伴い、
やらなきゃという大人が居る事を知ったことは
氏自身の救いにもなったのだそうである。

この本を出して、いろんな感想が寄せられたが、
教師職からの反響はおおむね好意的だったそうだ。
また、先生たちからの反響を読むと、
現場の先生たち、本当に困っているんだな、と思わされるそうだ。

氏が職場でも経験していることだそうだが、
子どもの問題に真剣にかかわると、
関わった人が体壊すが鬱になる、
それが今の現状なんだそうだ。

まぁ、これは教育現場に限ったことじゃない
と、おかもは思うけどね。
福祉、介護現場なんてのも似たようなもんだ。

その2に続く)Sign

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